번역
2024. 6. 11.

1화

「でさ、 そのあとであの野良犬、 なんて言ったと思う?」
「그래서 말이야, 그 뒤에 저 들개, 뭐라 말했다고 생각해?」

 


オレは話しかけている。

나는 말을 걸고 있다.

 


いつものように、 くだらない、 ばかばかしい、 どうでもいい日々のこと を。
オレのそばでどんな時でも静かに耳を傾けている、 彼女」 に向かっ て。

언제나와 같이, 시시한, 말도 안되는, 어떻든 좋은 날들의 일을.

나는 나는 옆에서 어떤 때에도 조용히 귀를 기울이고 있는, 「그녀」를 향해서.


「オレのこと、 友だちだってさ。 笑えない?」

「나에 대해서 친구라고 하잖아. 웃기지 않아?」


オレはおかしくて喉を鳴らして笑ったけど、 彼女はべつに笑わなかっ た。

나는 우스워서 목청을 돋우며 웃었지만, 그녀는 딱히 웃지 않았다.

珍しく、 なにもない週末だった。
昼下がりの低い陽光が、 窓辺から差し込んでいる。
誰もいない一人きりの部屋で、 ベッドにごろりと寝転んで、
「あー、 ほんと、 くだんないよねえ、 オレの人生」 って呟く。

드물게, 어떤 일도 없는 주말이었다.

정오를 조금 지났을 즈음 낮은 태양 빛이, 창가로부터 꽂힌다.

누구도 없는 혼자 뿐인 방에서, 침대에 데굴하고 뒹굴고,

「아―, 정말, 시시하네, 내 인생」이라며 중얼댄다.


彼女は黙ってるから、 どう受けとめたんだかは知らない。
今、彼女はなにを思ってるんだろうね?
どっちでもいいけどね。
그녀가 입을 다물고 있으니까, 어떻게 받아 들였는지는 모른다.

지금, 그녀는 무슨 생각을 하고 있을까?

어느 쪽이든 좋지만 말이야.

なにを考えているかなんて、 分からないほうが気楽なんだしさ。

무엇을 생각하고 있을까라니, 모르는 쪽이 편하고 말이지.



壁の向こうから、 誰かが近づいてくる気配がする。
足取りの速度、 軽めの足音、 全体の歩行の拍子と体の気配、
つま先から床に足をつける癖。あの人だなって分かる。

벽 너머에서, 누군가가 가까워지는 기척이 난다.

발걸음의 속도, 가벼운 발소리, 전체적인 보행의 박자와 신체의 기척,

발 끝부터 바닥에 발을 붙이는 버릇. 그 사람이라는 걸 알았다.

「なんのお誘いかな?」

「어떤 일이려나?」

そう言ったのと同時に、 部屋の扉がノックされた。

그렇게 말함과 동시에, 방의 문이 노크되었다.


「はいはーい、 どうぞ」

「네 네―, 들어오세요」


ベッドに上半身を起こして声をかけたら、 思ったとおり、 HAMAツアーズの主任が扉を開けた。

침대의 위에 반신을 일으켜세우고는 말을 걸었더니, 생각했던 대로, HAMA투어즈의 주임이 문을 열었다.


「あ……添くん、 ごめん。 もしかして電話の邪魔した? さっき話し声がしたような気がして······」

「아 …… 텐 군, 미안. 혹시 전화에 방해됐어? 아까 이야기하는 소리가 났던 느낌이 들어서······



へー意外に耳がいいんだね、 主任。
なんて思うがわざわざ言うこともない。
この人、 変に勘の良いところと悪いところが混ざってるからね。
多少ならオモチャにしてもいいけど、 ある程度用心も必要って感じ。
なにより、 周りのセキュリティガッチガチだから、 いじめると厄介。 そんな人。

헤― 의외로 귀가 좋구나, 주임.

라고 생각하지만 굳이 말할 이유도 없지.

이 사람, 이상하게 감이 좋은 점과 안 좋은 점이 섞여있으니까 말이지.

조금이라면 장난감으로 해도 좋겠지만, 어느정도 조심할 필요도 있다는 느낌.

무엇보다, 주위의 보안 깐깐하니까, 괴롭히면 귀찮아. 그런 사람.



「もう切ったとこだから大丈夫」

「이제 끊은 참이라 괜찮아」



「あ、もしかして……恋人さん的な人、 だったり·······した?」

「아, 혹시 …… 연인적인 사람, 이라던가 ······· 였어?」



主任は冗談ぽく言ってきた。 普段はこの手の冗談言わない人なのに、 珍しい。
ていうか、 言った直後に 「失敗した」 って顔して赤くなってるし。
でも分かるよ、 その態度の意味。 オレとはまだそんなに 打ち解けきってないなー、
ちょっとだけ踏み込んでみようかな、 仲良くなれるかなってやつでしょ?
残念、 それ、 犬相手になら効果あるけど。

주임은 농담처럼 말해왔다. 평소엔 이런 종류의 농담 하지 않는 사람인데, 희한해.

그보다, 말한 직후에 「실패했다」라는 얼굴하면서 빨개져 있고.

하지만 알겠어, 그 태도의 의미. 나와 아직 그렇게 허물 없는 관계는 아니지―,

조금은 파고 들어가 볼까나, 사이 좋아질 수 있을까 하는 그거지?

유감, 그거, 개 상대라면 성과 있겠지만.



「うーん」

「음―」

オレが悩んでるフリをすると、 主任はちょっと青ざめる。
またまた顔に全部出てるよ、 「やばい、 踏み込みすぎちゃった」 って。
でもまあ、 オレが話してた相手って彼女だしね。 恋人かー。 そうなるんだっけ?

내가 고민하는 척을 하면, 주임은 조금 창백해진다.

또 얼굴에 전부 드러나, 「위험해, 너무 파고 들어버렸다」하며.

그래도 뭐어, 내가 이야기하고 있었던 상대라는 거 그녀고 말이지. 연인인가―. 그렇게 되는 건가?


どっちでもいいから、 「ま、そんなとこ」 と答えたら、
主任が微妙にドギマギしてる。

어느 쪽이든 좋으니까, 「뭐, 그 쯤」이라고 대답했더니,

주임이 미묘하게 허둥댄다.

「そ、そうだったんだ…… 添くん、 やっぱりモテるんだね」

「그, 그랬구나 …… 텐 군, 역시 인기 많구나」

単純すぎる主任は信じて、 「邪魔しちゃってごめんね」 なんて言ってる。
まあ実際オレ、 モテますから、 このままにしといてもいいか。
モテるからってべつになに? って感じだけどね。 まあまあシゴトの役に立つくらいで。
지나치게 단순한 주임은 그걸 믿고, 「방해해서 미안해」라며 말한다.

뭐어 실제로 나, 인기 많으니까, 이대로 둬도 괜찮나.

인기 많다고 해서 딱히 뭐? 라는 감상이지만 말이지. 뭐어 뭐어 일에 도움이 되는 정도로.


「それよりなんか用でした?」

「그것보다 뭔가 볼일이었나요?」



「あっ、 そうだった! 今夜、 雪にぃがシュウマイ作ってくれるんだ。 それで、 シュウマイパーティーしようって話になってね。 添くんにも参加してほしいなって」

「앗, 맞다! 오늘 밤, 유키 형이 슈마이 만들거든. 그래서, 슈마이 파티하자 하고 이야기가 되었어서. 텐 군도 초대하고 싶네 하고



ああ、 なるほど。

아아, 과연.



今日はオフのメンバーが多いらしくて、 寮のリビングに暇なやつらが集まって だべってた。 犬がいたらうるさく誘いに来られるとこだったけど、 今日は 撮影だかなんだかでいないから、 オレは一人の時間を満喫してたってわけ。
で、リビングで盛り上がってシュウマイパーティーの流れになったと。

오늘은 오프인 멤버가 많은 거 같아서, 기숙사의 거실에 한가한 녀석들이 모여서 잡답했었지. 개가 있었다면 시끄럽게 초대하러 올 테였겠지만, 오늘은 촬영인가 뭔가로 없으니까, 나는 혼자의 시간을 만끽할 수 있다는 뜻.

그래서, 거실에서 시작된 잡담이 슈마이 파티로 흘러갔다고.

神名雪風のシュウマイは美味いから、 参加してもいっかなーと思ったけど、 窓の外にちらりと影が映って見えた。
카미나 유키카제의 슈마이는 맛있으니까, 참가해도 괜찮으려나―라고 생각했지만, 창 밖에서 언뜻 그림자가 비쳐보였다.

「ごめん。 夕方から臨時のバイト入っちゃってさー」
「あ、そっか。 分かった、 余ったら明日あっためなおして食べられるよう、 とっとくね!」

「미안. 저녁부터 임시 아르바이트 들어와 버려서―」

「아, 그런가. 알았어, 남으면 내일 다시 따뜻하게 먹을 수 있도록 해둘게!」


根っから善良っていうのかな、 お人好しの主任はちょっと残念そうに、 でもさっと退いて部屋から出て行った。
뿌리부터 선량하다고 해야 하나, 사람 좋은 주임은 조금 아쉬운 듯이, 하지만 재빠르게 방에서 나갔다.

窓の外に顔を向けると、 いつもどおり、 木の上に止まったカラスが オレを凝視している。 ガラス玉のような黒い瞳の中に、 一瞬冷たい光が走った。
「はいはい、 オシゴトね」
창 밖으로 얼굴을 향하면, 언제나와 같이, 나무 위에 멈춘 까마귀가 나를 응시하고 있다. 유리구슬 같은 검은 눈동자 안에, 일순 차가운 빛이 흘렀다.


スマホを手に取り、 ため息をつく。 彼女にも、 一応一言言っておく。

스마트폰을 손에 쥐고, 한숨을 쉰다. 그녀에게도, 일단 한마디 해둘까.


「話の途中だったけど······またね。 オシゴトしてくるよ」

「말하던 도중이었지만 ······ 또 보자. 일하고 올게」

彼女はたぶん、 オレを待っててくれるだろう。

그녀는 아마, 나를 기다려 주겠지.

叢雲添なんていう、 曖昧な存在じゃない······ただのオレを。

무라쿠모 텐이라고 하는, 애매한 존재가 아닌 ······ 그대로의 나를.


「おい新人、 海老は入れるなっつったろーが! 今日来てるお偉いさんに アレルギー持ちがいるって事前通達あっただろ!? なめてんのか!」

「어이 신참, 새우는 넣지 말라고 했잖아! 오늘 오는 높으신 분께 알레르기가 있다고 사전통보 있었잖아?! 일이 만만하냐!」

大規模なパーティーの最中、 次から次へ料理を提供しなきゃいけない厨房は、 ハイクラスホテルの中にあるとは思えないほど過酷な戦場になる。 気品もなにもあったもんじゃない。
スーシェフがまだ経験の浅い下っ端料理人のコミをどやしつける様子なんか、 料理人っていうよりヤクザ。
鍋やフライパンがぶつかる音、 用意された料理を次々と運び出す足音、 飲み干されたグラスを無遠慮に流し台へ置いていく音などが、
やかましく混み合い、 追いつかない調理と給仕にヘッドシェフから ホール係の下っ端まで、 みんなピリついて、 苛立っている。

대규모 파티의 한창, 차례차례 요리를 제공하지 않으면 안되는 주방은 하이클래스 호텔의 안에 있다고는 생각할 수 없을 정도로 혹독한 전장이 된다. 기품도 뭣도 있지 않아. 수셰프가 아직 경험이 부족한 말단 요리사의 슴베를 꾸짖고 있는 모습같은 건, 요리사라기보다는 야쿠자.

냄바나 후라이팬이 부딪히는 소리, 준비된 음식을 차레차례 나르는 발소리, 다 마신 유리잔을 거리낌 없이 싱크대에 두고가는 소리 같은 것이 시끄럽게 북적이며, 따라갈 수 없는 조리와 서빙에 헤드쉐프부터 홀 담당자의 말단까지 모두 신경이 곤두서고, 초조해 하고 있다.

まあオレも、 ここでは下っ端も下っ端、
臨時アルバイ トの給仕人なわけですけども。

뭐어 나도, 여기서는 말단도 말단,

임시 아르바이트의 서빙하는 사람인 사정입니다만.


「ドリンクこっちで準備しちゃいますね、 あとここの片付け終わりましたー」

「마실 것 이쪽으로 준비하겠습니다, 또 이곳의 정리도 끝났습니다―」

自分が運ぶフルートグラスをさくっと用意すると、 ホールのチーフから
「きみ、 仕事早いね。 名前なんだっけ?」 と訊かれる。 オレは営業スマイル。

자신이 옮기는 플루트 글라스를 솜씨 좋게 준비하면, 홀의 치프로부터

「자네, 일이 빠르군. 이름이 뭐였더라?」 라고 물어본다. 나는 영업 스마일.

「田中田可です~」

「타나카 타카입니다~」


こんな単発シゴトで覚えられんのめんどいなー。
そう思ってたところで、 耳の裏に小さな振動を感じる。
オレはつま先で軽めに床を踏んだ。 と、チーフの背後で、
半分タワーになっていた汚れ物のグラスが揺れて、 がしゃん!
と音をたてて崩れ落ちる。

이런 단발성 일에서 기억되는 거 귀찮네―.

그렇게 생각한 참에, 귀의 뒤에서 작은 진동을 느낀다.

나는 발끝으로 가볍게 바닥을 밟았다. 그러면, 치프의 뒤에서,

반쯤 타워로 되어있던 더러워진 유리잔이 흔들리고, 쾅!

하고 소리를 내며 무너져 내린다.


「うわあ! なにやってる、 皿洗い係は!?」

「우와아! 뭐하는 거야, 설거지 담당은?!」

チーフの視線がはずれた隙に、 さっさとごちゃついた厨房を抜け出す。
ドリンクはワゴンに預け、 華やかなパーティー会場へ。

치프의 시선이 떨어진 틈에, 빠르게 뒤죽박죽인 주방을 벗어난다.

마실 것은 왜건에게 맡기고, 화려한 파티 회장으로.


しみったれた厨房とは違って、 豪華なシャンデリア、
敷き詰められた柔らかな絨毯、
華やかな装飾と群れなす人々が視界に広がる。
耳裏につけた通信装置からの信号を読み解いて、 位置を特定し、
人で溢れる会場をかいくぐる。 給仕人の制服を着ているオレなんて、 もちろん誰も気に留めない。
얼룩진 주방과는 달리 호화로운 샹들리에,

깔려있는 부드러운 융단,

화려한 장식과 무리짓는 사람들이 시야에 펼쳐진다.

귀 뒤에 붙인 통신장치로 신호를 읽고, 위치를 특정하고,

사람으로 넘쳐나는 회장을 비집고 지나간다. 서빙하는 사람의 옷을 입고 있는 나 따위, 물론 아무도 신경쓰지 않아.

会場には、 スーツの男どもに、 ナイトドレスの女ども、 酒と香水と煙草、
それからどぎつい金と権力のにおいが充満し、 壇上には国民なら誰もが知って いるような、 政治家の名前と何周年だなんだと言祝ぐプレートが 掲げられている。
どう見たって、 ここは狂騒と哄笑と嘲弄だらけの腐った場所だ。

회장에는, 정장을 입은 남자들에, 나이트 드레스의 여자들, 술과 향수와 담배,

그리고 더러운 돈과 권력의 냄새가 충만했고, 단상에는 국민이라면 누구나 알고 있는듯한 정치가의 이름과 몇 주년이다 하는 축하 플레이트가 걸려져 있다.

어떻게 보든, 여기는 광란과 홍소와 조롱 뿐인 썩은 장소다.


とはいえまあ、 オレのシゴトはやりますけどね。 それが、 オレの生きてる理由らしいんで。
라고 해도, 내 일은 할 거지만요. 그게, 내가 사는 이유 같아서.



2화

非常階段に続く裏口の鍵を開けると、 闇夜にまたたくネオンが、まるで星空のようだった。

비상계단으로 이어지는 뒷문의 자물쇠를 열면, 어두운 밤에 반짝이는 네온이, 마치 별이 수놓인 하늘 같았다.


おー、 絶景絶景。
まあハイクラスホテルの、 ほぼ最上階に近いパーティーホールだからね。
東京のゴツイ夜景もよく見えるってもんだよね。

아―, 절경 절경.

뭐어, 하이클래스 호텔의 거의 최상층에 가까운 파티 홀이니까 말이지.

도쿄의 굉장한 밤 풍경도 잘 보인다는 거네.

扉を閉めて鉄筋の階段を一段上がると、 視線を走らせるまでもなく、 鼻先に苦い香りが漂ってくる。

문을 닫고 철근 계단을 한 단 올라가면, 훑어볼 것도 없이, 코 끝이 쓴 향기가 풍겨온다.

 


「はぁい こっちよ、 おぼっちゃま」

「네―에 여기요, 도련님」

上段の踊り場で、 手を振る影がある。

상단의 층계참에서, 손을 흔드는 그림자가 있다.


長くウェーブした髪に、 背中を大胆に見せるナイトドレス。
白く細い首に淡く光るパールのネックレス。
深く切り込んだサイドのスリットからは脚を覗かせ、 うっとうしいほどに女を見せつけてくるやつが、 鉄の欄干にもたれて、 煙草をくゆらせていた。

길게 웨이브한 머리에, 등을 대담하게 보여주는 나이트 드레스.

희고 가느다란 목에 희미하게 빛나는 펄 목걸이.

깊게 파인 사이드의 슬릿에서는 다리를 드러내, 거추장스러울 정도로 여자임을 보여주는 녀석이, 쇠 난간에 기대서 담배를 피우고 있다.



「聞いてたより可愛いじゃない? そのメガネがダサいけど」

「들었던 것보다 귀엽잖아? 그 안경이 좀 촌스럽지만」



足音をたてずに隣に立つと、 女が猫なで声で笑った。

발 소리를 내지 않고 옆에 서면, 여자가 부드러운 목소리로 웃는다.


豊かな胸を見せつけるようにドレスの襟元は深い。
女が動くたびに胸が揺れていて、 ここまで分かりやすくて引っかかるやついるの? って感じ。

풍성한 가슴을 보여주는 듯이 드레스의 목덜미는 깊다.

여자가 움직일 때마다 가슴이 흔들려서, 이렇게까지 알기 쉽고 눈에 밟히는 녀석 있어? 라는 느낌.


でもまあ、 声も髪型も体型すらも、 次会った時は違うんだろーな。 オレたちのシゴトなんてそんなもんだから。

그래도 뭐어, 목소리도 헤어스타일도 체형까지도, 다음에 만날 때는 다르겠지. 우리들이 하는 일이라는 건 그런 거니까.



女は無遠慮にオレの胸元に手を置いた。 お仕着せのウェイター服の下にある、 オレの体を観察したいんだろう。
ダサいと言われたメガネを軽く直して、 オレは笑う。

여자는 거리낌없이 내 가슴팍에 손을 얹었다. 겉치레인 웨이터 복 밑에 있는, 내 몸을 관찰하고 싶은 거겠지.



「一応完全迷彩の識別もできますし、 機能的には最新式なんですけど、 ダサいかどうかで言うと······ま、 ダサいですね」

「일단 완전 위장의 식별도 가능하고, 기능적으로는 최신식입니다만, 촌스럽냐 어떠냐라고 한다면 ······ 뭐어, 촌스럽네요」



普段からシゴト道具は特注のものを身につけている。
ピアスや指輪、 アクセサリーはその隠れ蔉にぴったりだ。

평소에도 일에 쓰는 도구는 특별 주문한 것으로 지니고 있다.

귀걸이나 반지, 액세서리는 그  *카쿠레미노에 딱이다.

(*입으면 모습이 보이지 않게된다는 미노 우비)


ただ今回は給仕の立場でアクセ類は御法度だったし、 急ごしらえの発注も無理だったから、 ま、仕方なく既製品のアイウェアってわけ。

그저 이번은 공급사의 입장에서 액세서리 류는 금지였고, 급조로 발주하는 것도 무리였으니까, 뭐, 어쩔 수 없이 기성품인 아이웨어라는 사정.

これはこれでいいんじゃない? ダサいメガネでも役に立つなら十分でしょ。

이건 이거대로 괜찮지 않아? 촌스러운 안경이라도 도움이 된다면 충분하잖아.




「使い慣れてない道具で大丈夫? 私、いつでも切り捨てるよ?」

「익숙하지 않은 도구로 괜찮아? 나, 언제든지 잘라 버리니까?」


赤いルージュをひいた唇で、 女がにっこりと笑う。

빨간 *루즈를 두른 입술로, 여자가 방긋 웃는다.

(*rouge. 입술에 바르는 것)



「あ、そこはオレもそうしますんで大丈夫です」

「아, 그건 저도 그러니 괜찮습니다」


お互い様ってことでー 言うと女はくすくす笑った。

피차일반이라는 식으로 한마디하면 여자는 쿡쿡 웃었다.

数秒間に一回の割合で、 その声音にはほんの小さくノイズがかかる。
やっぱこれボイスチェンジャー使ってんなって思う。

수초간에 한 번 꼴로 그 성음에는 아주 작은 노이즈가 걸린다.

역시 이거 보이스 체인저 쓰고 있구나 하고 생각한다.


「きみおもしろいねー、 キスしとこっか」

「너 재미있네―, 키스해둘까」



からかうような調子で言ってるけど、 案外本気だ。
女の眼の奥に、 ぎらりと欲望が覗いてる。
シゴト直前の興奮の発散に、 オレを使おうってハラね。
こっちにも利益があるなら乗ってやってもいいけどさー。

놀리는 듯한 말투로 말하고 있지만, 의외로 진심이다.

여자의 눈동자 안에, 번쩍하고 욕망이 엿보여.

일 직전의 흥분 발산에, 나를 쓰려는 속셈이네.

이쪽에도 이익이 있다면 놀아줘도 괜찮지만 말이야―.

「その前に煙草もらっていいすか? 持ち合わせがなくて」

「그 전에 담배 받아도 괜찮나요? 가진 것이 없어서」


へらりと笑って返すと、
女がすっと両手を広げて  「どうぞ? 盗ってって」  と挑発する。
体の線が露わになるドレスの動きで、 どこに煙草の箱があるのかを把握する。

천진난만하게 웃으며 되받아 치면,

여자가 쓱 두 손을 벌리고는 「여기? 훔쳐가」 하며 도발한다.

몸의 선이 드러나는 드레스의 움직임으로, 어디에 담뱃갑이 있는지를 파악한다.


これみよがしに胸の谷間かあ·····分かりやすい誘惑、 ご苦労様です。

이것 보란듯이 가슴의 골짜기인가 ·····알기 쉬운 유혹, 고생 많으십니다.

でも一本ふかしたいなーどうしよっかなあと考えて、 女の腰をするりと抱き寄せる。 甘ったるい香水の匂いが、 鼻の先をくすぐる。

하지만 한 대 피우고 싶네― 어쩔까나 하고 생각하며, 여자의 허리를 스르르 끌어안는다. 달콤한 향수 냄새가, 코끝을 간지럽힌다.



彼女とは、 まるで違う香りだ。

그녀와는, 전혀 다른 향기다.


はだけている背中の肌を指だけで撫でたら、 女がわずかに期待したのが分かった。

벌어져 있는 등의 피부를 손가락만으로 쓰다듬으면, 여자가 약간 기대한 것을 알 수 있었다.

でもその時には、 オレの指にはちゃっかりと、 平和を謳う煙草が一本。

하지만 그 때에는, 내 손가락에 약삭빠르게, 평화를 구가하는 담배가 한 대.


「ごちになりまーす」

「잘 받아가겠습니다―」


口に挟んで 頭を屈める。

입에 물고는 머리를 굽힌다.


女の指に挟まれたままの煙草から火を分けてもらったら、

女を放して煙を吸いこんだ。

여자의 손가락 사이에 있는 담배로부터 불을 나누어 받았으면,

여자를 놓아주곤 연기를 들이마신다.

苦い紫煙が肺の中を満たしていき、 一度吐き出すと、 オレはすっかり満足した。

쓴 담배 연기가 폐 속을 채워가고, 한 번 뱉어내면, 나는 완전히 만족한다.

 


「やな子ね、 まあ手際は悪くなさそうで安心したけど」

「싫은 아이네, 뭐어, 솜씨는 나쁘지 않아보이니 안심이지만」

 


女はオレで遊ぶ気が失せたようで、
組織から言付かってきたシゴト内容について素早く説明を始めた。

여자는 나로 놀 마음을 잃은 것 같아서,

조직으로부터 분부 받은 일의 내용에 대해 재빠르게 설명했다.

 

「今回のターゲットは与党の大物政治家、 樽前幸太郎。 二十八歳で父親の地盤を受け継いで当選して以来、 五十二年間政界に居座り続ける古狸、 与党最大派閥のドンね。 今日のパーティーは樽前の八十歳を祝ってのものよ」

「이번 타겟은 여권의 대물정치가, 타루마에 코타로. 28세로 부친의 지반을 물려받아, 당선된 이래 52년 간 정계에 몸 담고 있는 늙은 너구리. 여당 최대 계파의 수령이야. 오늘의 파티는 타루마에의 80세를 축하하는 파티야.」

 


「なるほどー、 本物のお偉いさんですね」

「과연―, 진짜 높으신 분이네요」

 

 

「偉いったって裏では犯罪まみれの汚職政治家よ。

まあここに集まってる連中のほとんどがそんなものだけど」

「훌륭하다고 해도 뒤에서는 범죄 투성이의 부정정치가야.

뭐어 여기에 모여있는 녀석들의 대부분이 거지만」

 

 

まあそうでしょーね。

大体この世界で、 まともに働いてる金持ちなんてどれだけいるんだかね?

뭐어 그렇네―요.

대체 이 세상에서, 제대로 일하고 있는 부자 같은 게 얼마나 되려나?


眼下に見えるきらめかしい夜景が、 煙草の煙の中でたゆたって見える。

눈 아래로 보이는 찬란한 밤 풍경이, 담배의 연기 속에 흔들거리며 보인다.

 

高層階からあくせく働く小市民を見下ろすために、

悪事に手を染めるやつらの多さといったらない。

고층에서 허덕거리며 일하는 소시민을 내려다보기 위해,

나쁜 일으로 손을 물들이는 녀석들이라면 말할 것도 없다.

 

まあどうでもいいけどね、 他人の人生なんて。

뭐어 어떻든 상관 없지만, 타인의 인생 같은 거.

「集まってる支援者や派閥の政治家たちが、 裏金作りのパー券を場内で秘密裏にやりとりするはずだから、 あんたはその現場と、 関わった人間を録画すること」

「보여있는 지원자나 계파 정치가들이, 뒷돈 마련을 위한 파티권을 장내에서 비밀리에 주고 받을 테니까, 당신은 그 현장과, 관련된 사람을 녹화하는 것」

 

「シャバそうなシゴトですねえ、 このダサメガネでも問題なさそ」

「쉬어보이는 일이네요―. 이 촌스러운 안경이라도 문제 없을 거 같아」

 

録画機能のあるメガネを、 軽く持ち上げる。

녹화 기능이 있는 안경을,가볍게 들어 올린다.


「樽前の派閥の人物リストは?」

「타루마에의 파벌 인물 리스트는?」

 

「覚えてきました。 一藤、 仁羽、 三倉あたりがパー券担当ですよね」

「기억해 왔습니다. 이치후지, 닌바, 미쿠라 정도가 파티 권의 담당이죠」

 

「分かってるならへましないでね。 樽前は私の獲物だから。 あいつ、 ホテルのスイートルームを押さえてる。 女を紹介してもらうつもりでね」

「알고 있으면 실수하지 마. 타루마에는 내 사냥감이니까. 그 녀석, 호텔의 스위트 룸을 꽉 잡고 있어. 여자를 소개 받을 생각으로 말이지」


「あ、じゃあそこは姉さんにお願いできるってことですね。 よかったー」

「これだってシャバい仕事よ」

「아, 그럼 거기는 누님에게 부탁할 수 있다는 거네요. 다행이다―」

「이 정도는 쉬운 일이야」


女は煙草を階段に捨てると、 ヒールのつま先で火を揉み消した。

여자는 담배를 계단에 버리곤, 힐의 발 끝으로 불을 비벼 껐다.



「発注元は野党のおじいちゃんですか?」

「残念。 今回は内部分裂の戦争。 党のNo.2からのご指名よ」

「へ~、 それはそれは」

「발주원이 야당의 할아버지입니까?」

「아쉽게도. 이번에는 내부 분열의 전쟁. 당의 No.2에서의 지명이야」

「헤~, 과연 과연」

興味ないけどさ。 政治の世界も大変ですね。

흥미 없지만 말이지. 정치의 세계도 힘드시겠네요.

 

でもまあ、 女が機嫌良さそうでよかった。

この程度話に付き合ってやれば、 なにかあった時の保険程度にはなるだろう。

그래도 뭐어, 여자가 기분 좋아 보여서 다행이다.

이 정도로 이야기에 어울려주면, 무슨 일이 있을 때의 보험 정도는 되겠지.

 

そうはいっても女のほうも、

さっき着火したものが消えたわけじゃなかったらしく。

그렇다고 해도 여자 쪽도,

아까 착화한 게 아직 사라지지 않은 듯.

「で、キスはどうなったんだっけ?」

「그래서, 키스는 어떻게 된 거지?」


目を細めて、 オレに訊いてくる。

눈을 가늘게 하고, 나에게 묻는다.


「自白剤入りのリップは勘弁してくださいよ。

仕事終わりにでもお願いしまーす」

「자백제 들은 립스틱은 좀 봐주세요.

일 끝난 뒤에라도 부탁드립니다―」

本音では、 八十のじいさんのあとにとか冗談じゃねーって思ってるけどね。

본심으로는, 80세 할아버지의 다음으로 라던가 농담 아니야― 라고 생각하고 있지만.

 

それでもオレがへらへら笑ったら、 大抵の女は許してくれる。

그럼에도 내가 천진난만하게 웃으면, 대부분의 여자는 용서해준다.


この女も、 一瞬だけムッとしたけど、 すぐに気分を入れ替えた。

이 여자도, 순간적으로 언짢아졌지만, 금방 기분을 바꿨다.

 

まあいっか 、 って顔をして、

뭐어 됐나, 하는 얼굴을 하곤,

 

「じゃ、 あとはヨロシクね。 十番目

「그럼, 잘 부탁해. 열 번째

 

それだけ言い置いて、 ホテルの中へ戻っていく。

그것만 말해두고는, 호텔의 안으로 돌아간다.


立ち去る背中を見送りながら、 十番目ねえって考えた。

떠나가는 뒷모습을 배웅하면서, 열 번째네― 하고 생각했다.

「……一応あるんだけどな。 「貂」 って本名が」

「일단 있단 말이지. 「텐」이라는 본명이」

まあ知るわけもないし。 知らなくていいし。

誰に呼ばれたいわけでもないけどね。
뭐어 알 리도 없고. 모르는 채로 좋고.

누군가에게 불리고 싶은 것도 아니지만 말이야.

この名前を知ってるのは、 もしかしたら今では、

オレと 「彼女」 だけかもな、 なんて。

이 이름을 알고 있는 건, 어쩌면 지금에 와서는,

나와 「그녀」 뿐일지도, 하고는.

 

どうでもいいことを考えて、 深く吸い込んだ煙を、

きらめかしいネオンに向かって吐き出した。

어떻든 좋은 일을 생각하곤, 깊이 들이마신 연기를,

찬란한 네온을 향해 뱉어냈다.

 

 

3화

 

「この樽前、 齢八十を迎えまして、 老いもあり、 

政治家人生にも終わりが見えるかと諦めかけたこともありましたが······· 

されども今こそ、 幼き時よりの大信念をば思いおこさんと、

 決意を改めたところでございます」

「이 타루마에, 나이 팔십을 맞이해서, 늙었기도 하고,

정치가 인생에도 끝이 보일까봐 포기했던 적도 있습니다만······· 

하지만 지금이야말로, 어릴적부터의 대신념을 생각하고,

결의를 다진 참입니다」

会場に響きわたる朗々とした声。 

八十のじいさんにしては驚くほど滑舌がいい。 政治家って感じのしゃべりだよ。

회장에 울려퍼지는 낭랑한 목소리.

팔십의 영감치고는 놀랄 정도로 활설이 좋다. 정치가라는 느낌의 수다십니다.


誕生日を祝われる樽前幸太郎本人が、 壇上でスピーチを始めたばかりだ。

생일 축하 받는 타루마에 코타로 본인이, 단상에서 스피치를 시작한 참이다.

 

オレは参加者にドリンクを配りながら、 メガネの録画機能をオンにして、 

会場中をくまなく回っていた。

나는 참가자에게 음료를 나눠주면서, 안경의 녹화 기능을 온으로 하고,

회장 전체를 구석구석 돌았다.


「思えば、 齢八十の今、 JPNをより豊かにと、 幼きころに抱いた大志は、 

幹となり、 我が人生を貫く骨子として、 己をば大樹たらしめよと 

戒めてくれるものでもあります」

「생각하면, 나이 팔십인 지금, JPN을 보다 풍부하게라며, 어릴적 품었던 큰 뜻은, 

줄기가 되어, 나의 인생을 관통하는 척추로써, 스스로를 큰 나무로 만들기 위해

훈계해 주는 것이기도 합니다」

噛みしめるように話す樽前を鼻で嗤い、 

「よく言うよ」 「裏でしてることはクソなくせに」 と小突きあう

 若手政治家たちの間をすり抜けながら、 

자신을 타이르듯이 말하는 타루마에를 비웃듯,

「잘도 말하네」 「뒤에서 하는 일은 더러운 주제에」라며 맞부딪친다.

젊은 정치가들의 사이를 비집고 나가면서,

 

お前らよかったね、 あのじーさん多分もうすぐ失脚するよ、と 心の中で祝ってやる。
너희들 다행이네, 저 아저씨 아마 곡 실각할거야, 라고 마음 속에서 축하해주마.

事前に覚えておいたキーパーソン、 一藤、 仁羽、 三倉の周りを周回すると、 

全員同じような薄型のデータカードを大企業のトップや 力のある圧力団体代表に渡していた。

誰と誰がやりとりしていたかもしっかり押さえたし、 これだけ証拠をそろえたら、

あとは芋づる式に余罪も引っ張ってこれるだろう。

미리 기억해둔 핵심인물, 이치후지, 닌바, 미쿠라의 주위를 돌면,

모두 똑같이 생긴 얇은 데이터 카드를 대기업의 총수나 힘있는 압력 단체 대표에게 전달하고 있다.

누구랑 누가 주고 받는지도 확실히 잡아뒀고, 이정도 증거가 모였으면,

다음은 덩쿨처럼 남은 죄들도 끌어와 주겠지.

 

オレのシゴトはこのへんで終わりかな。

내 일은 이 쯤에서 끝이려나.


そろそろ撤収するかあ、 と思った矢先、 不意に右腕を掴まれた。
슬슬 철수할까, 하고 생각하던 참, 느닷없이 오른팔을 잡혔다.

ちょい待ち。 なんで気配に気づかなかった? 

頭の奥で、 一気に警報が鳴った。
잠깐만. 왜 기척을 눈치채지 못했지?

머리 속에서, 단번에 경보가 울린다.

「どうされましたか?」 

「무슨 일이신가요?」

 

それでもただの給仕として、 やや驚いた顔をしながら振り向くと、 

スーツを着た三十前後の男がいた。
그럼에도 단순한 서빙원으로서, 다소 놀란 얼굴을 하고 돌아보니,

수트를 입은 서른 전후의 남자가 있었다.

中肉中背のビジネスマン風の男。 

体にややあっていないつるしのスーツ、 汚れていない革靴、 一見すると 

「なぜだか場違いな場所へ上司に連れてこられて困惑気味の企業の若手」 。 

적당한 키에 살이 알맞게 찐 비지니스 맨 풍의 남자.

몸에 조금 맞지 않는 기성품 정장, 때 묻지 않은 가죽 구두, 언뜻 보면

상사에 의해 어쩐지 어울리지 않는 장소에 끌려와 곤혹스러운 기업의 젊은 사람」.

 

だけどちょっとした体の使い方、 眼の奥の眼光、 オレの腕を掴む手のゴツさ、 

指の力の強さから分かる。

하지만 사소한 몸을 쓰는 방법, 눈동자 안의 눈빛, 나의 팔을 잡는 손의 거칠음,

손가락의 힘의 세기에서 알 수 있다.

こいつ、 オレと同業か、 それに近いなにかだって。

이 녀석, 나와 동업이던가, 그것에 가까운 무언가라며.


「そのメガネを見せてくれないか」

「그 안경 보여줄 수 있을까」

声の奥に威圧を含んで言ってくる。 一秒、 オレと男は眼を見交わした。 

男は政府関係者か、 公安か、 警察か、 はたまた······。

목소리 속에 위압을 품고 말해 온다. 일 초, 나와 남자가 눈을 맞췄다.

남자는 정부 관계자인가, 공안인가, 경찰인가, 혹은······.

「これからも、 なにとぞ樽前をよろしくお願い申し上げます!」 

「앞으로도, 아무쪼록 타루마에를 잘 부탁드립니다!」

 

じいさんのスピーチが終わり、 会場が拍手喝采に染まる。

영감의 스피치가 끝나고, 회장이 박수갈채로 물든다.


脳内に、 マップがよぎる。

뇌내에, 지도가 지나간다.


出口までは五十メートル。

エスカレーター部分は地上まで吹き抜け。

オレ一人なら簡単に逃げられる。

출구까지 오십 미터.

에스컬레이터 부분은 지상까지 빠져있는 구조.

나 혼자라면 간단하게 도망갈 수 있어.


とはいえ妙な騒ぎを起こしては、 背負ってる看板に傷がつく。 

さてどうしたもんかと考えること数拍。

라고 해도 묘한 소동을 벌이다간, 짊어진 간판에 흠집이 난다.

자, 어떻게 할까 하고 생각하는 게 몇 박.

「きゃあっ」 

「꺄악!」

 

女の甲高い声が響いた。

여자의 높은 목소리가 울렸다.

 

ちらりと見ると、 シゴトのパートナーがいた。

オレから離れること三メートル先で、

パールのネックレスがちりぢりになって床に落ちている。

女は動揺した演技で、 ネックレスの末路を悲しんでいる。

눈동자를 굴려서 보면, 일의 파트너가 있다.

나로부터 떨어져 있는 3미터 앞에서,

펄 목걸이가 뿔뿔이 흩어져 바닥에 떨어져 있다.

여자는 동요된 연기로, 목걸이의 말로를 슬퍼하고 있다.

男の視線がほんの一瞬そちらへ向いた。 

オレの腕を掴んでいる、 指の力が緩むのが分かった。

남자의 시선이 아주 잠깐 그쪽으로 향했다.

나의 팔을 잡고 있는 손가락의 힘이 풀리는 것을 알았다.

「えっと、 メガネですか? どうぞ」

「그러니까, 안경입니까? 여기요」

オレは顔を突き出して男に向けた。 

나는 얼굴을 내밀고 남자를 향했다.

 

右腕、 あんたが掴んでるし左手にはドリンク載せたトレイ持ってますから、 

「普通の」 フリーターは手、 動かせないでしょ。 

오른팔, 당신이 잡고 있는 왼팔은 마실 것을 실은 트레이를 가지고 있으니까,

「보통의」 아르바이트는 손, 움직이지 못하잖아요.

 

さあどうぞ、 メガネ あんたがとってくださいって仕草。

자 여기요, 당신이 안경을 가져가 주세요 하는 표정.

 

男はハッとしたようにオレの腕から手を放し、 すっとメガネを取っていった。

남자는 깜짝 놀란 듯 나의 팔에서 손을 놓고, 슥하고 안경을 가져갔다.


すぐに視認してから、

 「······いや、 どうやら勘違いだったようだ。 すまない」 と言って返してくる。

바로 시인하고 나서,

······아, 아무래도 착각이었나 보군. 미안해」라고 말하며 돌려준다.

 

その表情に、 うっすらと苦いものが載っている。

그 표정에, 희미하게 쓴 것이 실려 있다.

 

「いえいえ、 お仕事お疲れ様でーす」 

にっこり笑ってドリンクを渡した。

「아뇨아뇨, 수고 많으십니다―」

방긋 웃곤 마실 것을 건넸다.


お兄さん、 正義感が強いのはいいことだけど、 

本物の嘘つきってのは手先が器用なんだから。

 一瞬でも目を離したら負けなんだよね。

형님, 정의감 강한 것은 좋은 일이지만,

진짜 거짓말쟁이라는 건 손재주가 좋으니까.

한 순간이라도 눈을 떼면 지는 거란 말이지.

もちろんオレの裏ポケットには、 元のメガネが移動している。

물론 내 뒷 주머니에는, 원래의 안경이 이동해 있다.

とはいえどうも、 相手もバカじゃなかったようで。 

그렇다고 하지만 아무래도, 상대도 바보는 아니었던 모양이라.

 

シゴト終わりの帰り道、 

オレは後ろからついてくる密やかな足音に耳を澄ませた。

일이 끝나고 돌아가는 길,

나는 뒤에서 따라오는 은밀한 발소리에 귀를 기울였다.

一人·······いや二人だ。 かなり訓練されている。

 足音がほとんどないうえに、 歩調を合わせているから人数が判断しづらい。 

夜の闇に紛れて、 未知の勢力がオレを尾行している。

한 명 ······· 아니 두 명이다. 꽤 훈련되어있어.

발소리가 거의 없는 데다가, 보조를 맞추고 있기 때문에 인원 수를 판단하기 어려워.

밤의 어둠을 틈타서, 미지의 세력이 나를 미행하고 있다.

久々に運動しちゃう?

오랜만에 운동해버려?

結局今日は女に助けられちゃったしな。 などと思うが、 

先に確認しましょうかね。 

결국 오늘은 여자에게 도움 받아버렸고. 같은 거 생각하지만,

먼저 확인시켜 드릴까요.

 

ホウレンソウはシゴトの基本なんで。

*보연상은 일의 기본이니까.

(*보고·연락·상담의 앞 글자를 따서 만든 줄임말.)


路地裏へ曲がったタイミングで音もなく飛び上がり、 ビルの上に出た。

 追っ手はオレが消えたことに気づいたらしく、

 走ってきてキョロキョロしている。 

上からその様子を見下ろしながら、 隣のビルに飛び移る。

골목으로 꺾이는 타이밍에 소리도 없이 뛰어 올라, 빌딩의 위에 나온다.

추격자는 내가 사라진 것을 눈치챈 듯,

달려와서 두리번거리고 있다.

위에서부터 그 모습을 내려다보며, 옆 빌딩으로 뛰어 옮긴다.

耳裏の通信装置を起動して 「どゆことすか?」 って訊いたら、 

まあ組織のやつも分かってたらしい。
귀 뒤의 통신장치를 기동시켜서 「무슨 일입니까?」하고 물었더니,

뭐어 조직 녀석도 알고 있었던 것 같다.

「ヨロヅの内偵だ。 ホテルでのお前の動きを怪しんで追ってきたんだろう。 

今回の仕事では特に敵対関係でもないから、 手は出すな」

「만사의 내탐이다. 호텔에서의 네 움직임을 의심하고 쫓아왔겠지.

이번의 일에서는 특별히 적대관계도 아니니까, 손은 대지 마」


ああ、 国の狗ね。 どうりで青臭いと思った。 

一応聞いておいて正解だった。 

遊んでお手つきしてたら、 あとから面倒くさいことになってたに違いない。
아아, 나라의 개구나. 어쩐지 미숙하다고 생각이 들었다.

일단 들어둬서 정답이었다.

놀다가 손 대버렸다면, 나중에 귀찮은 일이 됐을 것이 틀림 없어.

「まあいいです。 今、撮れ高送りますんで、 確認ヨロでーす」

「뭐어 좋습니다. 지금, 찍은 수확물 보내드릴 테니, 확인 부탁드립니다―」

ダサメガネを装着し、 ビルからビルへ移動しつつデータを送る。 

やがて通信先から 「確認した。 ご苦労、 十番目」 と返ってきて通話が切れる。
촌스러운 안경을 착용하여, 빌딩에서 빌딩으로 이동하며 데이터를 보낸다.

이윽고 통신처에서 「확인했다. 고생이 많아. 열 번째」하고 답신하곤 전화가 끊긴다.

ちょうど高層ビルの屋上に着いたから、 

メガネと通信機を放り出し、 踏み潰して壊した。 

ぐちゃぐちゃになった機材は、 もはや元の形がなんだったのか 判別さえつかない。

마침 고층 빌딩 옥상에 도착했으니,

안경과 통신기를 내던지고, 짓밟아 부순다.

엉망이 된 기재는, 더이상 원래의 모습이 무엇이었는지 판별조차 할 수 없다.

「うわースプラッタ……すりつぶしたら、 お前がダサメガネだったなんて誰にも分かんないね······」 

どうでもいい独り言が漏れた。

「우와― 스플래터 …… 뭉개버렸더니, 네가 촌스러운 안경이었다는 건 누구도 모르겠지 ······」


……幼きころに抱いた大志は、 幹となり、 我が人生を貫く骨子として······。

······어릴적 품었던 큰 뜻은, 줄기가 되어, 나의 인생을 관통하는 척추로써 ······.



どうしてなのかその時、 じいさんの演説が、 耳の奥にノイズのように蘇った。 

同時に女の首を飾っていたパールが、 

ちりぢりになって床に散らばっていた光景が脳裏をよぎり、 

オレに踏み潰された機材のゴミと重なって見える。

어째서인지 그 때, 영감의 연설이, 귀 안쪽에 노이즈처럼 되살아났다.

동시에 여자의 목을 장식하던 펄이,

뿔뿔이 흩어져서 바닥에 떨어져있던 광경이 뇌리를 스치고,

나에게 짓밟힌 기재의 쓰레기와 겹쳐보인다.

うち捨てられたら消えるもの。 

うち捨てても消えないもの。

과감히 버리면 사라지는 것.

과감히 버려도 사라지지 않는 것.


世の中にはなにがどれだけあるんだろ。

세상 속에는 무엇이 얼마나 있는 걸까.


·······自分の人生を貫く背骨はあるか?

·······자신의 인생을 관통하는 척추가 있어?


遠い闇の向こうから、 問いかけてくる声がした。 

あれはいつのことだったのか。 そして誰の言葉だったのか。

먼 어둠의 저편에서, 물어보는 소리가 난다.

그건 언제의 일이었던가. 그리고 누구의 말이었던가.


あの人は、 オレを 「貂」 って呼んでたっけ?

그 사람, 나를 「텐」이라고 불렀던가?

 

 

4화

 

いつの時代が始まりだったのか。

어느 시대의 시작이었던가.

歴史の裏に隠れ、 ただその血脈は受け継がれてきた。

역사의 뒤에 숨겨진, 그저 그 혈맥은 이어져 내려온.

必要悪? あるいは、 獣の生存本能? 

「二曲輪」 は権力の背後で、 闇に紛れて常に蠢いてきた家だ。

필요악? 아니면, 짐승의 생존본능?

「니노쿠루와」는 권력의 배후에서, 어둠에 섞여 늘 준동하던 집이다.

大政奉還、 敗戦、 思想とイデオロギーの崩壊······ 

命運を絶たれる分かれ目は何度もあったはずなのに、

 結局はしぶとく生き残っている。 

대정봉환, 패전, 사상과 *이데올로기의 붕괴 ······ 

명운을 끊는 갈림길은 여러 번 있었을 텐데,

결국은 끈질기게 살아 남아 있다.

(*이데올로기: 이념)

 

自由が標榜 され、 愛と知恵が恩恵を受けるこの時代にまで。

자유가 표방되고, 사랑과 지혜가 은혜를 받는 이 시대에까지.


ただ、 そこに生まれたから。 

そこで生きて、 死ぬために、 生きている。

그저, 그곳에 태어났으니까.

그곳에서 살고, 죽기위해서, 살아있다.

 

そしてオレは今、 その家の十番目として生きている。

그리고 내가 지금, 그 집의 열 번째로서 살아있다.


彼女に話す。

くだらない、 ばかばかしい、 どうでもいい日々のことを。

그녀에게 말한다.

시시한, 말도 안되는, 어떻든 좋은 날들의 일을.


「昨日さ、 やっとファーストツアーってやつが終わったの。 オレ、 わりと真面目にやったんだよ?

めんどくさいけど、 まだここには残ってなきゃならないからね」

「어제 말이야, 겨우 퍼스트 투어라는 게 끝났어. 나, 의외로 진지하게 했다고?

귀찮지만, 아직 여기에는 남아있지 않으면 안되니까 말이야」

「大学の授業で書いたレポートさあ、 気ィ抜いてたらプラスA評価つけられそうになって。 夜中、 教授の部屋に忍び込んですり替えといた。 あんま成績あげるとヤバいじゃん?」

「대학의 수업에서 쓴 레포트 자, 기 빼면 A+ 평가 받을 수 있을 거 같아서. 밤 중에 교수의 방에 몰래 들어가서 바꿔치기 했어. 너무 성적 올리면 위험하잖아?」

「中華街の大鹿がさ、 野良犬ごときに出し抜かれてんの。 おかしくない? まあオレもビックリさせられたけど、 あの人はオレよりもびびってたと思うね」

「중화가의 오오시카가 말이야, 들개 따위에 내뺐다고 하던데. 웃기지 않아? 뭐어 나도 깜짝 놀랐지만, 그 사람은 나보다도 벌벌 떨었다고 생각해」


「今日はマジで疲れたよー。 組織の下っ端がへまやらかしたから、 オレまでかり出されちゃって。 抗争の片付けってダルいんだよなあ」

「오늘은 진짜로 지쳤어―. 조직의 말단이 실수해버렸으니까, 나까지 불려가서. 항쟁 정리하는 거 피곤하단 말이지」

 「今回のシゴトはシャバすぎたなー。 野良犬、 酔うとなんでも喋りすぎ。 懐柔されるのも秒なんだよね。 追加報酬もらったら、 プレゼント買ってあげる」

「이번 일은 너무 시원찮았네―. 들개, 취하면 뭐든 너무 말해. 회유되는 것도 초 단위고. 추가 보수를 받으면, 선물 사줄게」


「スケーターがさあ、 大学にまで弁当持たしてきてさすがにウケた。 でもまあ、 大学の友だち的存在? やつらが羨んでたから、 金とって売れるかもねー、 そこまではしないけど」

「스케이터가 말이야, 대학에 와서까지 도시락 싸와서 그건 웃겼어. 그래도 뭐어, 대학의 친구같은 존재? 녀석들이 부러워했으니까, 돈 받고 팔지도―, 거기까진 안 하겠지만」

 「あの女、 扱いやすかったけど、 思ったとおり最後は暴れ回ってたね。 大丈夫だった? ちゃんと守ってあげられたと思うけど」 

「그 여자, 다루기 쉬웠는데, 생각한대로 마지막엔 날뛰고 다녔네. 괜찮았어? 제대로 지켜줬다고 생각하지만」

「死に損ないの天才、 かなり勘がいいっぽい。 ただ、 弱点も分かりやすいかな。 大事なものがある人間って大変だよね」

「죽지 못하는 천재, 꽤 감이 좋은 거 같아. 그저, 약점도 알기 쉬울까. 중요한 것이 있는 사람은 힘들겠네」


「あーオレね、 明日からHAMAの1区長やるんだよね。

 ······今回も、 また違う人生だけど」

「아― 나말이지, 내일부터 HAMA의 1구장 하게됐어.

······이번에도, 또 다른 인생이지만」


また、 嘘の人生だけど。

또, 거짓된 인생이지만.


「ついてきてくれる?」

「따라와 줄래?」

彼女はなにも言わなかった。 

그녀는 무엇도 말하지 않았다.


それでもオレは彼女を連れ出した。

그럼에도 나는 그녀를 데려갔다.


うち捨てた過去、 偽りだらけの人生、 その場限りの設定、 

リセットするたびに忘れ去られる偽名、 その向こうにある曖昧なオレの輪郭。

내버린 과거, 거짓말투성이의 인생, 그때 뿐인 설정,

리셋할 때마다 잊혀지는 가명, 그 너머에 있는 애매한 내 윤곽.

「二曲輪貂」 という名の男のことを、 彼女だけが知っている。

「니노쿠루와 텐」이라고 하는 이름의 남자는, 그녀만이 알고있다.

「……九番目が死ぬ時、 言ってた」

……아홉 번째가 죽을 때, 말했어」

過去の向こう側から声がする。

과거의 맞은 편에서 목소리가 난다.


「自分の人生を貫く背骨はあるかって。 ······オレの背骨は」

「자신의 인생을 꿰뚫는 척추가 있냐면서. ······나의 척추는」


九番目から奪ったもの。 オレのすべてを知っている 「彼女」。

それだけが、 常に誰かを演じている、 嘘偽りだらけのオレの背骨のようなもの。 

아홉 번째로부터 뺏은 것. 나의 모든 것을 알고 있는 「그녀」.

그것만이, 항상 누군가를 연기하고 있는, 거짓투성이의 나의 척추같은 것.

 

他に、 変わらないものなんてなにひとつ持っていない。

그 밖에는 변하지 않는 것은 그 무엇도 가지고 있지 않아.

オレはただ生まれて、 生きて死んでいく。

나는 그저 태어나서, 살아가고 죽어가.

歴史の中で回転する、 数あるうちの生の一つ。 

そのことに、 なんの意味も理由も、 ないからね。

역사 속에서 회전하는, 수많은 우리의 삶의 하나.

그 점에, 아무 의미도 이유도 없으니까.

 

 

5화

 

シゴトの翌日。 実家って設定の寿司屋で一泊して、 適当に時間をつぶし、 報酬をもらって寮に帰った。 
ら、彼女がいなかった。
일의 다음날. 친가라는 설정의 초밥집에서 하룻밤 자고, 시간을 때우고, 보수를 받고 기숙사로 돌아갔다.

그랬더니, 그녀가 없었다.

一人自室に立ち尽くし、 胸のざわめきを感じた。 

홀로 스스로의 방에 가만히 서 있기만 하며, 가슴의 술렁거림을 느꼈다.


咄嗟にスマホを出して、 彼女の位置を確認した。
순간적으로 스마트폰을 꺼내, 그녀의 위치를 확인했다.

そう離れていないことに安堵しながら部屋を出ると、 リビングから主任が顔を出して、

그렇게 떨어지지 않은 것에 안도하며 방을 나가자, 거실에서 주임이 얼굴을 보이곤,


「あ、添くん。 昨日のシュウマイの残り、 冷蔵庫にあるよ。 食べる?」 

「아, 텐 군. 어제 슈마이 남은 거, 냉장고에 있어. 먹을래?」

と声をかけてくる。

하고 말을 걸어온다.

「あー、 ありがとうございます。 ······それより、 もしかして知ってますかね」

「아―, 감사합니다. ······그것보다, 혹시 알고있나요」

なにを? と首をかしげる主任に、 探し物のことを言うと、 すぐに教えてくれた。
무엇을? 이라며 목을 기울이는 주임에게, 찾는 것에 대해 말하면, 바로 알려주었다.

寮の広いベランダには、 くつろげるよう屋外用のソファが数脚置いてある。 

기숙사의 넓은 베란다에는, 휴식을 취할 수 있도록 야외용 소파가 여러 개 놓여있다.

橙色の西日を浴びながら、 野良犬がバカ面をさらして寝こけていて、 
その手の中にオレの鉢植えがあった。

주황색 석양을 맞으며, 들개가 바보같은 얼굴을 하고 뒹굴고 있고,

그 손 안에 내 화분이 있었다.


「·······練牙さん。 なにしてんの?」 

·······렌가 씨, 뭐하고 있어?」

正直、 頭をはたいてやりたいけど、 そんなことしたら後々面倒くさい。
솔직히, 머리를 쳐 버리고 싶지만, 그런 일 해버리면 두고두고 귀찮아.

仕方なく穏便に起こしてやると、 犬は寝ぼけて瞼をこすりながら

어쩔 수 없이 원만하게 깨워주니, 개는 잠이 덜깬 채로 눈꺼풀을 비비면서
 「あれ? 添? お帰り~」 といかにも間抜けな声を出した。

「어라? 텐? 어서와~」하고 멍청한 목소리를 낸다.

「あ! 今日オレ、 オフだったからさ! 
お前の大事な植物、 日に当ててやろうと思ってひなたっこしてたんだ。 
窓からの日差しだけだと病気になるかもしれないだろ?」

「아! 오늘 나, 오프였으니까!

네 소중한 식물, 햇빛 쐬게 해줘야지 하고 생각해서, 볕 쬐고 있었어.

창문으로 들어오는 햇빛만으로는 병에 걸릴지도 모르니까, 그렇지?

犬のやつ 鉢植えを両手で持って得意げに言ってくる。
개 녀석 화분을 양손으로 들고 자랑스럽게 말해온다.

オレは頭の中で、 チリッと神経がいらつくのを感じた。 

내 머리 속에서, 찌릿하고 신경이 거슬리는 것을 느꼈다.

お前はクソバカか? ·してやろうか?
너는 빌어먹을 바보냐? ○○버릴까?

「……気遣いはありがたいんだけどさ、アグラオネマは直射日光にあてると弱る植物で、 下手すると枯れるんだよね。 次からはこういうのやめてね」
……신경써주는 건 고맙지만요, 아그라오네마는 직사광선을 맞으면 약해지는 식물로, 잘못하면 시들어버려. 다음부터는 이런 거 하지 말아줘」

普段、 犬に合わせてやってるオレにしては、 冷たい口調だったかも。 
でも犬は鈍いから気づいていない。 

평소, 개에게 맞춰주고 있는 나치고는, 차가운 어조였을지도.

하지만 개는 둔하니까 눈치채지 못했겠지.

それどころかさっと青ざめて、 心配そうに鉢植えを覗き込む。
눈치채기는 커녕 빠르게 퍼래져선, 걱정스럽게 화분을 들여다 본다.

青々とした緑。 わずかに香る、 静謐なにおい。

파릇파릇한 녹색. 약간의 향기가 나는, 평온한 냄새.

物言わぬオレのー 「彼女」 。
말하지 않는 나의― 「그녀」.

「ま、まさか太陽が苦手な植物があるなんて日らなかったんだ……、 ほ、ほんとにごめん」

「설, 설마 태양에 약한 식물이 있다니 몰랐어 …… , 정, 정말 미안해」

 すっかりしょげかえっている犬に、 オレはため息交じりに呟いた。
완전히 풀이 죽은 개에게, 나는 한숨을 쉬며 중얼거렸다.

「……いるんだって。 そういうのも」
……있습니다. 그런 것도」

眩しい光だとか、 清廉さだとか。 
清らかさだとか、 純粋さだとか。
눈부신 빛이라던가, 청렴함이라던가.

맑음이라던가, 순수함이라던가.

……きれいなもの全部。 

…… 빛나는 것 전부.

苦手なやつだっているんだよ。
 暗くて濁ってて汚い所じゃないと生きていけないやつだって。
싫어하는 녀석도 있는 거지.

어둡고 탁하고 더러운 곳이 아니면 살아갈 수 없는 녀석 같은 것도.

「オレ、 どうしたらいい? 栄養剤とか買ってこようか?」 

「나, 어쩌면 좋아? 영양제 같은 거라도 사올까?」

「それはもうオレが買ってきたんで」

「그건 이미 제가 사온 참이라」 

もらった報酬から、 彼女へのプレゼントは買ってある。 
犬からもらうまでもない。
받은 보수에서, 그녀를 위한 선물은 사뒀다.

개에게 받을 것까지도 없어.


「アグ·······アグーネオマ? ·······次はちゃんと調べてから·····そうだ、 凪に世話の仕方を聞いて······」 

「아그 ······· 아그―네오마? ·······다음부턴 제대로 알아본 다음에 ·····그렇지, 나기에게 돌보는 법을 듣고 ······」

犬がぶつぶつ言っている。 
こいつ本当にバカだな、 なんでまだ世話する気なんだよ。
개는 중얼중얼 말하고 있다.

이녀석 정말로 바보구나, 왜 또 돌볼 생각인 거야.

そう思うけど、 頭の片隅で思い出す。 
こいつも、 偽の人生を生きてるんだったっけって。

그렇게 생각하지만, 머리 한 구석에서 생각이 난다.

이녀석도, 가짜 인생을 살고 있다고 했던가.

……薄暗くて、 濁ってて、 汚い場所。

…… 어둡고, 탁하고, 더러운 장소. 

お前だって知ってるくせに なんでそうもきれいなまんまでいられるんだか。 

너도 알고 있는 주제에 어째서 그렇게 깨끗한 채로 있을 수가 있는 거지.

オレはひっそりと、 そんなことを考える。

나는 조용히, 그런 걸 생각한다.

オレもお前くらいバカだったら、 光の中でも生きていけたのか?
나도 너만큼 바보였다면, 빛 속에서도 살아갈 수 있었을까?

でもきっとそんなんじゃ、 オレはとっくのとうに死んでただろうね。

하지만 분명 그래서야, 나는 이미 전에 죽어버렸겠지.

 この犬に、 お前の人生の背骨はなんだって訊いたら、 どう答えるかな。 

이 개에게, 너의 인생의 척추는 뭐냐고 물었다면, 어떻게 대답할까나. 

その想像は、 ちょっとだけオレを不愉快にさせる。
그 상상은, 나를 조금 불쾌하게 한다.

まあでも。 オレにはまだ、 シゴトが残ってるし。 
当面は、 この場所にいなきゃならない。
뭐어 그래도, 나에게는 아직, 일이 남아있고.

당분간은 이 장소에 있지 않으면 안돼.


叢雲添の人生は、 もうしばらく続けていく。 

무라쿠모 텐의 인생은, 당분간은 이어나간다.

そんでそのために、 眼の前の愚かな犬とは、 そこそこ仲良くしといたほうが得なはずで。

그래서 그를 위해서, 눈 앞의 바보같은 개와는, 그럭저럭 사이좋게 지내야 이득일테니.

「······オレ、 ちゃんと勉強するな。 お前の大事な植物、 添が留守の時とか世話できるように……」
······나, 제대로 공부할게. 네 소중한 식물, 텐이 없을 때 돌봐줄 수 있도록 ······」

そんなこと、 誰も頼んでねーよと思いながら。
 なんて心がきれいなんですか、 感心しますよって思いながら。

그런 거, 누구에게도 부탁하지 않아― 라고 생각하면서.

얼마나 심성이 고웁니까, 감탄합니다 라고 생각하면서.

オレの眼をまっすぐ見て、 全身から素直な気持ちを傾けてくる かわいそうなこの犬に、 オレはにっこり笑ってやった。
나의 눈을 똑바로 보고, 온 몸에서 솔직한 마음을 기울이는 불쌍한 이 개에게, 나는 방긋 웃어주었다.

 「ありがとね、 練牙さん」
「고마워요, 렌가 씨」

その気持ちが嘘か本当かは······さて、 どうなんだろうね?

이 기분은 거짓인가 진짜인가 ······ 글쎄, 어떠려나?

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번역 2  (0) 2024.06.14
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